暴れマリンバの迷宮
木琴ナイト
今夜は、マリンバディナーショーへ行ってきました。場所は、錦にある「レストラン ツキダテ」。http://www.r-tsukidate.com
話は2ヵ月ほど前にさかのぼります。
ツキダテはうちの会社のお客さんなのですが、社長宛にディナーショーの案内のハガキが送られてきており、それに私が目をつけました。他の社員は誰も行きそうにないですし。料理はともかく、マリンバのディナーショーなんてあまりないですしね。パーカッショニストの血がちょっとだけうずうずいたしました(いつからそんなニストになったんだよ)。
私がチーフに「行きたいんですけど」と告げると、喜んでいました。我が社の株も上がりますしね。行ってさし上げましょう。だって、私以外はマリンバが何なのかもわからない素人たちなんですから。ハガキにある“ディーナーショー”とか“マリンバ奏者”とかいう文字から、おそらく楽器だろうということは推測できたんでしょう。いったいどんな楽器なのか、社員たちは私がいない間に論争していたようです。あとから私が「ま、大きな木琴」と教えると、「あ、木琴か」「木琴だって」「あ〜」と“外れた”顔をしておりました。いったいどんな楽器を想像していたんでしょう(笑)。
ということがありまして、今日がショー当日です。賛同してくれた方は、おけらさんと鍛冶屋さん。なんだ、いつものメンバーじゃないですか(笑)。ま、費用も1万円とお高めですしね。暴れ太鼓さんも来たがってたのですが、仕事の様子がわからないとのことで断念なさいました。暴れさんの分まで堪能してこなきゃね。
第1部 ディナー
さ、到着。中に案内されると、着飾ったマダムたちでいっぱい。おけらさんは多少それなりな格好でしたが、仕事帰りの鍛冶屋さんと私は、いたって普段着。ちょっと場違いな感じがいたします。しかも、ちょっと隔離された部屋に通されました。早くも危険人物に指定されてしまったのでしょうか(笑)。
食前酒として、おけらさんと鍛冶屋さんがスパークリングワイン、私はりんごジュースを注文し、ディナースタートです。フレンチ自体、そんなに飛びぬけて美味しいものじゃないと私は踏んでいるのですが、今日はどうでしょうね。ま、メインはマリンバですから。
まずはお通しが運ばれてきました。
Amuse-bouche(お通し)
ツキダテ自家製 黒豚のリエット
バケットになにやら乗っています。リエットというのですね。なんだか、焼いていない餃子の具みたいな感じです。グチャグチャっとしたコンビーフのようでもあります。不味いわけじゃないんですが、よくわからないまま完食。ごちそうさまでした。
おや、空いていた隣のテーブルに、老夫婦が遅れてやってきました。老夫婦というにはちょっと若いですかね。年老いた中年夫婦です。ぎこちない発音で「スパークリングワイン」と注文しています。年寄りにはちょっと小難しい外国語ですね。
そうこうしているうちに、今度はオードブルです。
Hors-d'oeuvre(オードブル)
黒毛和牛のたたき風カルパッチョ
信州ネギのマリネ
真ハモと真だこのマリネ
これは美味しいですね。4種とも美味しいです。牛肉はたたき風ですからほとんど生なわけですし、タコもあって、普段なら苦手なわけですが、美味しいです。ちゃんとしたハモなんて初めて食べたかも。とってもやわらかいです。ああ、美味しい。
とっても美味しいんですが、隣の夫婦の会話が気になって気になって。ずっと「おしっこ、おしっこ」と奥様が連呼(笑)。食事時に発する単語じゃありません。どうやら犬の話のようです。お宅の犬のお小水の話題は、今夜くらい控えていただきたいですね。
そのワードを聞き逃して話題についてこれていないおけらさん。すぐ隣に夫婦がいるため、私が「おしっこ」と口にするわけにもいかず、仕方なく、配られたメニューのカードにペンで「おしっこ」と殴り書きしてお伝えしました。ただ、それを見たおけらさんは、てっきり人のおしっこの話かと思い込んでしまったわけですが。いくらなんでも、人間の尿の話はしないでしょう(笑)。
Soupe(スープ)
かぼちゃと毛蟹の冷製ポタージュ
スープですね。かぼちゃ好きにはたまらないチョイスです。かぼちゃのスープの真ん中にカニのスープが浮いている感じです。
一口ゴクリ。あははは、これは美味しい。笑えてきます。そのくらい美味しいです。そして、意識していないのに、自然と「美味しい、美味しい」と口にしてしまいます。そして、食べたくなくなります。なくなっちゃうのが嫌で(笑)。本当に美味しいものに出逢うとこういう現象が起こるわけですね。そして、食べ終わっても、無意識に「あー、美味しかった」とニヤニヤ。変態です(笑)。
Poisson(魚料理)
スズキとオマールのムース 松茸包み焼き
ズッキーニ、米ナス、万願寺唐辛子、アーティチョーク
いよいよメイン。まずは魚料理です。スズキの切り身の上に、オマール海老のムースが乗り、分厚い松茸が埋め込まれています。そして、皿を彩る色とりどりの野菜たち、酸味の利いたオリーブオイルのソース。
ああ、美味しい。松茸の香りもしっかりといたします。大きいですし。ソースも美味しいです。皿に散らばった細かい野菜もひとつ残らずいただきました。ボリューム満点ですね。フランス料理といえば、大きな皿にチョロチョロっと乗っているイメージでしたが、本日はたっぷりです。パンももう3個目に突入です(食いすぎ)。
あ、あまりに美味しいものが続いているので、満足しすぎて、すっかりこの後のマリンバを忘れていました(笑)。
Viande(肉料理)
十勝牛のヒレステーキ
ジロール茸、ジャガイモのピューレ添え
肉の登場です。トロっとしたクリーム状のジャガイモの上に、レアで焼かれたステーキが乗せられ、キノコのソテーが散りばめられています。これもね、美味しいんですよ。レアなので肉もとてもやわらかく、ジャガイモも物凄く美味しい。「このキノコも香ばしくて美味しいね。しめじだよね?」などと言っていたわけですが、ジロール茸って書いてあるじゃないですか(笑)。神田川さん、いい加減なことを言わないように。
ただ、牛肉にスモークで香りが付けられてたんですよね。だから、口に入れたとたん“ウインナー”の香りが(笑)。せっかくの高級品なのに、安っぽく感じてしまいます。美味しいことに違いはないのですが、どうしてスモークしちゃったのかなぁというのが、3人の初ダメ出し。
でも、凄いことですよ、これは。いつも、何を食べに行っても最初から最後まで文句ばかり言って帰る我々です。その我々が、こんなに賞賛しているんです。きっと、ものすごく美味しいんでしょうよ。
ナカガワアツシ風に言えば「Levelが高い!Viva ツキダテ!!」です。(アツシは結構です)
さて、ここまで食べ終えたところで、マリンバコンサートが行われる部屋に移動。聴きながら、デザートを堪能するようです。あ、しまった。コースのメニューとコンサートの曲目が書かれたカードをテーブルに置いてきてしまいました。だって、あのカードには「おしっこ」の殴り書きが(笑)。ここで私が死んだりしたら、謎のダイイングメッセージとして話題になってしまいますね。「おしっこ殺人事件」なんて死んでからも恥をかく羽目に。でも、仕方ない。あきらめましょう、おしっこの奪還は。
第2部 コンサート
さ、いよいよマリンバコンサートの開幕です。有名らしきマリンバ奏者と、名古屋で活躍しているというピアノ奏者の演奏です。このマリンバ奏者、事前に入手していた写真よりも随分老けていますね。いつの写真なんでしょうか。写真では中年といったイメージだったのですが、実物は初老に近い。
一曲目は、おなじみ「熊ん蜂の飛行」。高速技巧の連続ですね。マレットが蜂のごとく飛行しております。無事に終わりました。
トークに突入。さすがは初老。汗がすごい、息切れがすごい、髪の乱れがすごい。一曲目にして凄まじい疲労感が伝わってきます。そんなものは伝えていただかなくてもよろしいんです(笑)。感動をいただければ。
続いて「美しく青きドナウ」「ハンガリー舞曲第5番」。ハンガリー舞曲は好きな曲なので聴いていて気分がよいです。裂けるチーズのCMでおなじみですね。
それにしても、このMr.マリンバ、巧いんだとは思いますが、激しい動きになったり、大きな音になったりした時に、ものすごく強く叩くんです。そして、足音もズドンズドン。地響きがすごい。全身で演奏しております。暴れ狂う龍のようです。広いホールならまだしも、今夜は大きくない部屋での演奏なんですから、もう少し調節して演奏していただけるとありがたい。
お、デザートとコーヒーが運ばれてきました。
夏をイメージしたという、さっぱりしたゼリー&シャーベットがグラスに入っています。隣のカップには、秋のイメージということで、リンゴの入った温かいチョコムース。どちらも美味しかったです。ただ、演奏を聴きながらなので、食べるタイミングが難しい。トーク中はトーク中で、展開が早すぎてじっくり味わえないですし。
さて、次は「オルゴール」という曲。プログラムに記載されている作曲者を見て「ん?聞いたことない人だなぁ」と思ったら、あ、自分で作った曲ね(笑)。失礼しました。この曲はグロッケンでの演奏のようです。
演奏前、グロッケンを見て「ボロボロだね。うちの高校のほうがいいやつだよねぇ」とバカにしていたのですが、いざ演奏となると、とってもいい音がしました。素晴らしい響きです。マレットがいいやつなんでしょうね。(奏者の腕じゃないのか)
次の曲も彼オリジナルの楽曲「マリンバのための組曲第2番」。“組曲”とあって、7つもの曲から成っております。もう、この時点でうんざりですよね(笑)。知らない曲を長々と聴かせられてもね、眠いです。というか、ぶっちゃけ、2曲目のドナウでもう飽きてます(笑)。
曲間に必ずトークを挟むわけですが、このトークが実に面白くないんですよ(笑)。どんどんどんどん話が進むわけですが、どの話もオチをつけないうちに次に進んでしまうんです。話の展開が早いので、思い出そうとしてもほとんど憶えておりません。
憶えている話といっても、「毎年、打楽器協会の理事の忘年会を、広尾に住んでるナンタラさんの家の向かいにあるスナックで行っている」とか、「打楽器協会のナンタラさんが、阪神淡路大震災の時にナンタラホテルに滞在してて、すごく揺れた」とか、「老人の日に東京でコンサートをやりますから、ぜひいらしてください」とかいうどうでもいい情報ですから、まったく役に立ちません。
だいたい、老人の日って何ですか。敬老の日でしょ。もっと敬いなさい(笑)。だから、あなたも初老のくせに敬われないんですよ(それは勝手な決め付け)。
こんなことも言ってました。グァテマラの話。グァテマラでは、マリンバが国の楽器だそうです。へぇ。「空港に着いたら、なんと、空港にマリンバが置いてあるんですよ!」とのこと。でも、その空港の話はここでお終い。それでどうした、とか、だからどうなった、とかそういったトークはなく、すでに次の話に移っております。早い早い。
で、グァテマラのマリンバは通常のマリンバと形態が違うんですって。黒鍵にあたる部分が、白鍵と白鍵の間ではなくて、白鍵のすぐ上に付いているそうです。通常は、ドとレの間の上にド#が付いているわけですが、グァテマラ版は、ドの上にド#、レの上にレ#、そしてミの上には何もない、といった感じ。だから、通常の奏法とはちょっと異なるわけですよね。
「困ってしまいました」
そりゃ、困ったでしょうな。
「で、どうなったかというと…」
どうなったかというと?
「結局、私はそれを弾くことが出来ませんでした」
え?放棄?(笑) プロなんですから、なんとかして弾いてみましょうよ。というか、きっとなんとか頑張ってはみたんでしょうから、その話をちゃんと話して下さいよ(笑)。トークまで放棄ですか。
さ、ここで本日のメインイベント。先ほど食べた料理を曲にしてくれるそうです。まったく期待できません(笑)。魚料理を曲にするそうです。スズキとオマールムースと松茸のやつね。
散らばった野菜たちを表現したというポロンポロンという音からはじまりました。演奏してる最中に「これはお野菜です」と口で言っちゃってますから、その時点でぜんぜんダメな気がいたしますが(笑)。
その後は、あの料理をイメージしたとは到底思えないくらいの、おどろおどろしい曲調が続き、そのまま終了。鍛冶屋さんは「火曜サスペンス劇場にしか聞こえなくて困った」と後で漏らしていました。確かにそうですね。
え?まだやるんですか?デザートを曲に? もう結構ですよ(笑)。
無難にデザート演奏を終え、再びトーク。今の時代、トークも上手くないと客は呼べないんだなぁと実感いたしました。しゃべらないならしゃべらない、しゃべるならもっとトークの技をみがけ、といった感想です。
おや、今度は中国の話のようです。「王(ワン)木琴」という木琴があるそうです。単なる木のパイプをつけた単純なつくりのようですが。で、王木琴がどうしました?
と、その時、地震が! 大きく揺れました。でも、演奏時にMr.マリンバが床を踏みすぎて、我々はずっと振動で揺れている状態だったので、一瞬、どっちかわかりませんでした。トーク中なのに(笑)。
「地震の話をしていたら、地震が来てしまいました」
うまい! いやいや、全然うまくないですよ。地震の話なんて、もう随分前ですから(笑)。
「じゃ、曲いきましょう」
えっ?話の続きは?王木琴はどうなったんですか? 永遠に続く迷宮に迷い込んだようなトークを展開していた彼ですが、王木琴の話の迷宮入りは確実なものとなったようです。
ということで「星に願いを」に突入したわけですが、先ほどの地震の動揺で、さっぱり内容を覚えちゃいません(笑)。
続いては、ん?プログラムを見る限りでは聞いたことない曲ですね。「火祭りの踊り」ですって。Mr.マリンバの解説によると、悪霊を追い払う話の曲だそうですよ。恐ろしめの曲ですかね。
演奏がはじまって、メロディーが浮かび上がったとたん、3人で顔を合わせてしまいました。1年の定演の2部で最初のグループが踊った曲でした。あの、帽子やらフラッグやらの小道具を持って、そろーりそろり歩いたり、しゃがんでみたり、回ってみたり、走り抜けたりしてみた、佐々木先生プロデュースのダンスです。笑えて仕方ありません。あれは悪霊払いのダンスだったわけですね。
(こちらで曲の視聴が出来ます。→http://www8.ocn.ne.jp/~guitar58/himaturi.html)
クライマックスが近づくにつれて曲は盛り上がるのですが、私は、ダンスの最後でみんなが集まって「わぁ!!」となる絵が頭から離れなくて、ニヤついて困りました。スポットライトを浴びた昔の仲間達が、今、ここに再現されております。
そして、最後の曲は、神田川さんのために用意されたかのような「チャルダッシュ」。赤のダンスの曲ですね。冒頭のスローな部分は、これでもかというほどの技巧を詰め込んでおりました。技巧に走りすぎてなかなかメロディーが前に進まないため、伴奏のピアノのお姉さんが「まだかしら?」と笑って待機しているくらいでした(笑)。
ただ、テンポが速くなってからは音を外すことも多々あり、絶頂期だった当時の私と大して変わりないなぁと自分を賞賛(笑)。やるじゃん、神田川。そして、全体のアレンジ自体は、当時の赤ダンスの時のアレンジと一緒だなぁとも思いました。やるじゃん、神田川(笑)。
花束贈呈を終え、アンコールに突入。「エルクンバンチェロ」です。途中で「ハッ」と気合を入れる声に驚きましたが、程なく終了。終演後、常連らしきおばさまたちがCDの即売会に群がっていましたが、我々は当然スルーしてさようなら。