優先は160円でダッシュ

臨終列車

 今日の帰り、地下鉄の優先席で寝ているジジイがいました。そりゃジジイだって地下鉄で寝るでしょうが、違うんです。ちゃんと寝てたんです3席分使って(笑)。カバンを枕にして仰向けになってました。とんでもない話です。私は外から見ただけで、乗ろうとしたら起きてあわてて降りていきました。乗ったら、傘が残されてました。ジジイのかどうかはわかりませんが、ジジイのだったらいいな♪

ダッシュ太一

 今日、チーフが例のイタリア村に納品に行ったところ、TOKIOの国分くんが鉄腕ダッシュのロケで来ていたそうです。スタート地点だったみたいです。いつの放送なのか、なんの企画なのかもわかりませんが(笑)。見たかったな、芸能人。

モモ割り算

 昨日の桃ですが、計算したら一本160円でしたのでよろしく。もっと高いと思ってたのですが、そうでもなかったです。ま、160g缶で160円ですから、存分に高いのは間違いないですが(笑)。


さて、そろそろ行きますか、第2話。

「外科医・難波」 2-①


第二話  それぞれの勇気


 正面玄関のカウンター。その奥のデスクで真由美は仕事をしていた。書類を整理していると、聞き覚えのある声が彼女の名を呼んだ。緊張と興奮が入り混じった声色であった。真由美が手を止め、その方に顔をやると、難波が立っていた。
「ああ、難波先生」
「どうも」
「どうかなさったんですか」
「あの・・・・」
 真由美はきょとんとした顔で難波の目をじっと見つめた。難波は重い口を開いた。


「それにしても、さっきの難波先生の顔、凄かったですよ」
 真由美は笑ってそう話しかけた。隣の難波は引きつった笑顔で微笑み返した。
「そうでした?」
「ええ、何事かと思いましたよ。食事に誘うぐらいで、あははは」
「お恥ずかしい」
 難波は緊張しているせいか、照れ笑いも充分に出来ていなかった。
 実際、難波は真由美を食事に誘うかギリギリまで迷っていた。病院内ですれ違う時に軽く挨拶を交わす程度の関係。そんな自分が、彼女を昼食に誘っていいものか、と難波は何度も何度も自分に問うた。そして、長い長い論争の末、誘うという結論が頭の中で勝利し、今、病院の食堂に二人はいる。小さな勇気のおかげだ。


「難波先生、まだお時間あります?」
 食後のお茶を飲み干し、真由美が言った。
「大丈夫ですが、何か」
「何ってわけでもないですけど、まだ少しおしゃべりしたくて」
「ああ、もちろん。全然構いませんよ」
真由美は食器の乗ったプレートを持ち、立ち上がった。
「行きましょう」
「ん?」
 難波も後に続いた。


 普段、あまりひと気のない非常階段の踊り場に、カップコーヒーの湯気が二つ昇っていた。
「事故ですか・・・・」
「ええ、私が十五の時にね。で、父も母も死んじゃって、途方にくれたんです」
「それは大変でしたね。何か、悪いこと聞いちゃったな」
「いえ、いいんです。もう昔の話ですから・・・・」
 真由美は笑顔で軽くそう言ったが、瞳にはまだ悲しみの影がちらついていたように難波には思えた。
「そんな時、私を助けてくれたのが脇谷先生でした。実は私・・・脇谷先生の姪なんかじゃないんです」
 難波は驚いて、飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになった。真由美は続けた。
「先生は、医師だった父の大学時代の後輩なんです。とても仲がよくで、私も小さい頃から可愛がってもらってました。葬儀の日、先生は行くあてのない私に、うちへ来なさいって言ってくれて。私、凄く嬉しかった」
 真由美の目は何だか遠い日を見つめているようで、少し濡れていた。真由美はその後の話も難波に聞かせた。思い出を自分自身で確かめるように、一つ一つかみしめて。


「・・・・で、今もこの病院でお世話に」
「いろいろあったんですね。でも、脇谷先生も凄いよなぁ。豊田さんを引き取るって決心した時は、そうとう勇気がいったと思う。尊敬するよ」
「ええ、私も」
 真由美は天井を見つめ、少しぬるくなったコーヒーをすすった。思い出を一緒に飲み込むように。
「豊田さん、それにしても・・・・」
 難波はさっきから気になっていた疑問を真由美にぶつけようとしていた。
「ん? 何です?」
 きょとんとした顔で難波の顔を見つめる真由美に、難波は続けた。
「どうして、こんな場所に?」
「場所?」
「ええ、こんなところまで来なくても、食堂でもよかったわけでしょう?」
 過去の話を誰かに聞かれたくない、そういう思いは理解できるが、それでもこんな非常階段でなくてもよかったはずだ。あの時、食堂には周りにそんなに人がいたわけじゃないし。難波は詮索した。
「何か・・・訳アリ?」
「ああ、私は問題ないんですけど・・・。脇谷先生がうるさくって。先生、私の親代わりでしょ。だから、男関係にはね、目を光らせてるから。悪い虫が付かないようにって」
 にっこり笑って真由美はそう答えた。難波は一瞬ドキっとした。悪い虫・・・。悪い虫にしろ、いい虫にしろ、豊田さんは自分のことをそういう風に思ってくれているのかと。もしかして、自分に対して特別な感情を持ってくれているのかと。
「いやいやいやいや、悪い虫だなんてそんな。僕ら、別に恋人同士ってわけじゃないんだし、あの、その、特別な関係ってわけでも・・・」
「いえいえいえいえ、そうなんですけど、そういう意味じゃなくって、何て言ったらいいのかしら、だからその・・・」
 二人とも早口で否定しあった。自分たちでも何を言っているのかわからないくらい、焦っていた。
「じゃ、私、そろそろ」
 慌てて立ち上がろうとした真由美だったが、バランスを崩しよろけた。
「あっ」
 次の瞬間、難波は彼女を抱きかかえていた。


(つづく)