猛ウーパーに注意

故障中

 朝、会社への道を歩いていたら、おかしな新聞受けを発見。ドアについてるあれですよ。あそこに「不良」という殴り書きの貼り紙が。そりゃ言いたいことはわかるのですが、殴り書きですから、とんでもない不良青年がいるみたいな雰囲気を醸し出しておりました。猛犬注意みたいに。

ウーパー驚く

 さて、昨夜は例の観光ホテルツアーがあり、予告通り私は遠慮させていただきました。その日の朝、ウーパーに「あれっ?行かないんですか!?」と驚かれ、「タダなんだから行けばいいじゃないですか」と言われました。あれ?と思った方、正解。同じ台詞をまた吐かれました(笑)。(→ウーパーと呼んでくれ - ザ★神田川風呂抜けているにもほどがありますよね。天然すぎです。天然ゴム。マレーシア。
 ちなみに、参加した同僚のミスターJは、料理を取りに行こうとしたら、隣の席の女性に「すいません、お皿を…」と声をかけられたそうです。従業員と間違われたんでしょうね。汚れた皿をさげてもらいたかったようですが、言いかけて途中で「あ、この人は違う!」と気付いて笑って誤魔化していたそうです。でも、本人はカッターシャツにスラックスなのですから、格好はぜんぜん違いますよね(笑)。オーラか。

天国から地獄

 今日で子供たちは夏休みが終わるんですよね。仕事を始めて早6年目。夏休みなんて実感はまったくありません。子供たち、明日からどんどん苦しみなさい


外科医・難波」 2-②

 山岡は、古い患者のカルテを調べに、資料室に向かっているところだった。だが、ドアの目前で資料室の鍵を持って来ていないことに気がついた。
「あ、またやっちゃった。どうして私はこうもうっかりさんなのかしら。このうっかり娘!」
 自分の頭をこぶしで数回軽く叩き、鍵を取りに帰ろうと踵を返したその時、背後でカチャリとドアノブが回る音がした。振り返ると、資料室から脇谷が顔を覗かせた。
「脇谷先生!」
 脇谷は山岡のその声に驚き、目を見開いた。その驚き方は異常で、急に名前を呼ばれた時のそれとは明らかに違っていた。
「先生、ちょうどよかった。鍵、貸してくれませんか?」
「え、鍵? どこの鍵だ」
「資料室のに決まってるじゃないですか。ちょっと調べ物があって。いいですか?」
「あ、ああ、ここの鍵か。ほら」
 山岡は脇谷から鍵を受け取った。
「ちゃんと返しておいてくれよ。鍵が紛失して容疑が私にかかったら大変だからな」
「はい、了解しました、ヒントっ」
 山岡は手で敬礼のポーズをとってみせた。それを見て脇谷も真似をした。傍から見れば、二人で警官のコントをしているようで、馬鹿げた姿であった。
「では、しっかり頼みますよ」
「はい、警部!」


 難波と真由美が抱き合っていたのは一瞬だった。しかしながら、少なくとも難波にはその一瞬が随分長く感じられた。はじめは何が起きたのかとっさのことでわからなかったが、お互い我に返り、その状況を把握すると、心臓はよりいっそう激しく脈打ちだした。ぱっと手を離す二人。
「いやいやいやいや、別にそういうつもりじゃ」
「ええ、その、事故ですもんね。そうよ、事故」
「そうそう、事故です」
 さっきよりも明らかに二人とも動転している。落ち着け、落ち着けと難波は自分に言い聞かせるものの、そう簡単にはいかなかった。真由美も真由美で、急いで立ち去ろうとして、わずかにコーヒーの残った紙コップを落としてしまい、事態はさらに悪化した。
「きゃ、いやだ」
「大丈夫ですか、豊田さん。コーヒーかかりませんでした?」
「私は何ともないです。けど・・・、あっ、先生、白衣にコーヒーが!」
 難波は自分の白衣を見下ろした。わずかではあるが、茶色の点々が並んでいる。
「大変だわ、すぐに落とさないと。シミになっちゃう」
「いいですよ、これくらい。わかりませんよ」
「でも、そういうわけには」
 慌てふためく二人に、ひとつの足音が近づいていた。


こらーっ、何やっとる! どこの病棟だ、それ!*1
 二人の頭上から怒声が響いた。脇谷であった。
「大変っ、脇谷先生だわ! 見つかったらまずいことになる。早く行って!」
「わ、わかった。それじゃあ」
 脇谷が走って現場に到着する頃には、難波の姿はすっかり消えていた。
「何だ、真由美じゃないか。こんなところで何をしている」
「何って、休憩ですよ、先生」
 何事もなかったかのように、真由美は平然と答えた。
「まあ、いいが、こんなひと気のないところは物騒だから、気をつけるようにな」
「はい、先生」
 笑顔でそう言うと、脇谷もつられて笑顔になった。
「それより、この床はどうしたんだね」
「コーヒーか何かじゃないかしら。あ、ほら、あそこにコップが」
 少し向こうに黙って転がっていた紙コップを指して、真由美が言った。
「何かあったのか?」
「さあ。じゃあ、私、仕事に戻りますので」
 やや早足で真由美はその場を立ち去った。一人残された脇谷は床にこぼれたコーヒーをぼんやりと眺めていた。そして、脇谷の靴がピシャと音を立てた。


「えーと、西川さんのカルテ、カルテ」
 山岡はカルテのぎっしり詰まったロッカーを相手に格闘していた。
「に、に、に・・・・あった」
 「ニ」と書かれた引き出しを見つけ、手を伸ばしたその時、隣の「ナ」の引き出しが開いていることに気が付いた。カルテの入った封筒が挟まって、閉まらなくなっている。
「誰、ちゃんとしまわない人は。開けたら閉めなさいよね*2
 そうぶつぶつ言いながら、山岡は飛び出したカルテをきちんと収め、引き出しをしめた。
「そういえば、脇谷先生、何の用でここにいらしたのかしら・・・・」
 山岡はかすかな疑問を抱いたが、特に気にすることもなく仕事に戻り、脇谷と、開いたままの引き出しを結びつけることも当然なかった。

*1:脇谷の名台詞。実際には「病棟」ではなく「学校」を用いる。練習中、おしゃべりに夢中になる生徒に浴びせられる罵声。

*2:神田川の代表作「愛のみそ煮込み」に登場するヒロインの決め台詞。基本は「開けたら閉めんかい!」。