黒幕は誰だ!罪と罰の訪問者
遭遇
昨夜、突然、鍛冶屋さんからメールが。
お芝居を観に行った帰りに、ヤスティー・幅ちゃん夫妻を見かけ、あろうことか一緒に地下鉄に乗るハメになったそうです。それは幸運ですね。どうせなら声かければよかったのに。同じお芝居を観ていたそうなので、いっそ3人一緒に並んで観れば良かったのに(笑)。
その後、「大変。腕を組んでるわ(笑)」というメールも届きましたので、えらい熱々ぶりが伝わってきます。結婚してもう随分なりますよね。いつまでも仲睦まじくていいじゃないですか。
ヤスティーといえば、高校時代、こんなことがあったのを思い出しました。
来客
高校2年のことだったでしょうか。休み時間、教室にいた私のもとへ、別のクラスの友人・タナカくん(仮名)がやってきました。廊下に呼び出される神田川さん。いったい何の話でしょう。
「…出せ」
はい? いきなり何ですか? さっぱり意味がわかりません。
「早く出せ!」
「は?」
話がまったく見えません。それに、さっきからやたらとまわりを気にするタナカくん。どうしてこんなに挙動不審なんでしょう。
「鍵だ!鍵よこせ!」
カギ? 何のカギですか?
「コレの鍵だ!」
タナカくんはそう言って、周囲を気にしながら自分の手を私に見せてくれました。手首にはしっかりと手錠がかけられています。えっ!?手錠!?(笑)
話はその日の朝にさかのぼります。
罰ゲームなのか、遊びなのか、そのあたりは私にはよくわかりませんが、仲間たちから手錠をかけられてしまったタナカくん。鍵をあずかるのは、謎の人物“X”。果たして、タナカくんは無事にその“X”を探し出すことができるのでしょうか。
とはいっても、時間は待ってはくれません。通常通り、学校生活を送らなければいけませんからね。ほら、一時限目がもう始まりますよ。
何とか授業を切り抜けたタナカくん。ま、体育は無理でしょうし、いろいろと動き回る、例えば化学の実験とかなら危ない気はしますが、普通の教室での授業なら大抵の場合は大丈夫でしょうね。大人しくじっとしていれば。さ、この調子で二限目もがんばりましょう。
二限目は、現国だか古典だかはわかりませんが、ヤスティーの受け持つ授業の到来です。一限目同様、二限目も難なくやり過ごせるだろうと安に考えていたタナカくんに、地獄の試練が訪れました。
なんと、ヤスティーにあてられてしまったタナカくん(笑)。起立して、教科書を朗読しなければいけません。恐ろしい。
走る心臓の鼓動を抑えながら、教科書を読み始めます。手錠のことを知っている仲間たちは、笑いをこらえるのに必死だったでしょうね。もし、私がその場にいて、その事実を知っていたとしたら、ちょっと耐えられないくらいの笑いの噴火口。
なんとか読み終え、席につくタナカくん。しかし、単なる試練をひとつ乗り越えただけにすぎません。カギを持つ“X”を探し出すまでは、この恐怖はどこまでも続くのです。解放のときはまだまだ遠い。
休み時間になり、タナカくんは、仲間から“X”についてのヒントを教えてもらいました。
「おまえもよく知っている、メガネをかけた男がカギを持っている」
ピンときたタナカくんは、教室を飛び出していきました。
ここで、話は冒頭のやりとりに戻ります。
「鍵よこせ!」
残念ですが、私はカギなど持っていません。この時点では、手錠のことさえ知らなかったわけですから。
「ホントに持ってないんだな」
「そんなもん、ない」
「クソっ!!」
廊下を走り去るタナカくん。次なる“メガネの男”を捜し求めて。
さて、結局、カギを隠し持っていた謎の黒幕“X”は誰だったのかというと、授業でタナカくんを窮地に陥れたヤスティーだった、という驚きのオチ。恐るべき教師(笑)。