ハードボイルド源氏物語

源氏物語

赤い悪魔

 3日前、朝起きてみると顔に赤いできものが。ちょうど、アゴのラインのちょっと上あたり。直径1.5センチほどの赤っぽい異物が発生しておりました。何でしょう。ニキビや吹き出物のように膿んでる感じはないし、かゆいとか痛いとかそんな大げさな症状も特になし。こんなの初めてだなぁ。
 でも、そんなできものはどうでもよくなるくらい、別の症状も併発。アゴが痛い。こちらはできものができているわけではないのですが、押すと内部がものすごく痛い。口を大きく開けたり、アゴを動かしたりしても、違和感。恐ろしい。原因のわからない痛みほど怖いものはありません。皮膚を切り裂いたら、中が腐ってたりしたらどうしよう。
 今日は水曜日。通常ならフレックスで半日仕事だったわけですが、年が明けて仕事もそんなに忙しくないので、昨日のうちに作業を済ませ、本日は完全休業になりました。よかったよかった。時間もあるので、たびたびブログにも登場する行きつけの皮膚科に行って、いつもの薬をもらうついでに相談してきましょう。でも、いきなりオペとかになったら怖いなぁ(怖がりにも程があるぞ)


 さて、病院の待合室にてTokai Walkerを読んで時間つぶし。以前行った「つけ麺屋」が紹介されていたので、「ケッ」と吐き捨てておきました(笑)。だって、あんなにまずかったくせに。*1


神田川さ〜ん、診察室へどうぞ」
 はいはい。
「今日はどうしました?」
「えっと、いつもの薬がなくなったのと、あと、ここに赤いものが出来て…」
「あ〜、それはヘルペスだね」
 えっ!ヘルペスっ!?


 話は1週間前にさかのぼります。
 マッサージにてシモちゃんと会話中、たまたま病気の話になりました。
シ「僕、体調が悪くなると、ヘルペスになるんですよぉ」
神「ヘルペス? なんですか?それ」
 ヘルニアなら知ってましたが、ヘルペスはよくご存じない神田川さん。どういうものなのか、いろいろと聞きました。いろんな症状があるそうなのですが、シモちゃんの場合は耳や頭に症状があらわれるそうです。ひどいときは、耳がポンポンに腫れ、頭に激痛が走る。ちょっと頭を撫でる程度で、うぉーと雄たけびをあげたくなるくらいの痛みらしく、大変みたいです。薬を飲めばすぐに治るそうなんですけどね。
 ヘルペスのやっかいなところは、一度感染したら、一生ウイルスが体内に生息すること。そして、風邪を引いて体調が悪くなったり、体力が低下すると、ウイルスが暴れだして症状が出てしまう。
神「うわぁ、大変ですね」


 …というような出来事があったわけなのですが、まさかその時は、まもなく私にもヘルペスの驚異が舞い降りるなんて思っていないわけで。とんだ偶然です。
 特に面白い話でもないし、他にも書くことがあったのでここには載せなかったわけですが、こんなことになるんだったら、どうしてその話をその時に書いておかなかったのか、ものすごく後悔(笑)。大きな伏線を拾い損ねてしまいました。神田川さん、久々のショック!(病気よりそっちかよ)


 で、アゴの痛みはなんですか?
「それはね、リンパ節が腫れてるんだよ。すぐに治るから大丈夫」
 あ、そうなんですか。よかった、腐ってなくて(笑)。原因がわかれば安心です。
「疲れが溜まってるんでしょう」
 そうかなぁ。最近、仕事は忙しくないしなぁ。でも、もっと寝なきゃいけないんでしょうね。はい、わかりました。


 帰宅して、とりあえずヘルペスがどんな病気なのかを調査。なになに?

 単純ヘルペスのうち、口唇ヘルペスの初感染では、口唇、歯肉、口腔粘膜に痛い水疱、びらんがみられ、首のリンパ節も腫れます。痛みのため食事をとるのも困難な場合があります。

 おや、リンパ節、当たってるじゃないですか。痛くてご飯食べれないってつらいだろうなぁ。
 よかった、私はそこまで痛くなくて。
 よかった、病院の帰りにデニーズに寄って、「包み焼きデミチーズハンバーグ」と「大盛りライス」と「かぼちゃのアイス」と「ホットチョコレート〜カカオサバンナNo.19」を思う存分堪能できるくらいの症状で(笑)。
 
 でも、これから先ずっとかぁ…。奇病のアレルギー性気管支炎もあることですし、ろくでもないですね。
 誕生日が2日違いで星座も同じシモちゃんと、ヘルペスまで共有しあうとは思いませんでした(笑)。

煮込み物語

 今日の夕食は、味噌煮込みうどん。私、味噌煮込みって好きじゃないんですよね。茹でないでそのまま煮込むから麺が固いでしょう。それに八丁味噌も好物じゃないですし。でも、もらいものだというので食べなきゃ仕方ないか。


 固ゆでといえば、もはや伝説と化している“源氏物語”のことを書かなきゃいけませんよね。破産係さんが大被害にあったあの事件。


 もう何年前の話でしょうか、高校を卒業して何年か後、部活の合宿に指導がてら遊びに行った時のことです。
 お昼時、お腹がすいた私や友人たちは、合宿所の近くにある「源氏」というそば屋のようなうどん屋のような店へお昼ご飯を食べに行くことに。そこは結構な店構えで、合宿所に行くたびによく利用しておりました。
 同行したのは、破産係さんと借金女王と、ヒゲをたくわえ立派な体格で赤いシャツを着てしまったため、それ以来「だるま」と秘かに呼ばれるようになってしまった年上の先輩。
 店に到着し、早速注文。だるまが何を注文したのかは忘れましたが、私と借金女王は、共にうどんと焼肉重のセットを注文。破産係さんも「あ、じゃあ、私もそれで」と言えばよかったんですよね。そうしておけば、後々起こる悲劇を回避できたかもしれないのに。
 しかし、そんな未来を予知できるはずのない彼女は、恐るべき悪魔のメニューを指してしまったのです。そう、「ざるそば」という名の悪魔を…。


 注文してから30分ほど経ちました。
「遅いね…」
 いつまで待っても出てこないんです、破産係さんのざるそばが。他の3人はというと、とうの昔に食べ終わってしまっています。食べ始めてるんじゃないんですよ、完食です。それでも、こないんです、そばが。
「もしかして、今、打ってるやつじゃない?
 そう言ってだるまが指差すその先には、大きなガラス越しにそばを打つ職人の姿が
「まさかねぇ」
 だって、注文してこんなに時間が経ってるんですよ。なのに、今頃打ってるそばが破産係さんのそばなわけないじゃないですか。ありえない。
 しかし、このときばかりは、そのありえない想像がありえる真実だったのです。


 テーブルにざるそばが到着したのは、それからさらに5分後のこと。時間的にも、先ほど打っていたそばであることは明白です。まさに、これぞ打ちたて。
 でも、やっとのことで食事にありつけるわけですから、喜ばないと。よかったですね、破産係さん。すっかり食べ終わってくつろいでいる我々も喜び満載です。
 しかし、そんな喜びに反比例するかのごとく、そばをひとくちすすった破産係さんの顔は歪んでいきました。えっ? どうしたんですか?
かたい…」
 固ゆで!?(笑) 嘆くほどですから相当のかたさなのでしょうね。どれどれ。我々もかわるがわる試食。おっ、こりゃ、かたいわ(笑)。
 よく茹だっていないというよりは、まだ茹でていないという表現の方がしっくりきますね。ほら、やっぱりさっき打っていたそばですよ。ちゃんと茹でる時間もなかったんじゃん(笑)。これを食べきるのは無理。私でも無理。「かたい、かたい」と言いながらまだ青いバナナを完食した私でも無理(笑)。*2
 待ちくたびれて、出てきたそばがこれでは破産係さんも報われません。この怒りをどこにぶつければいいの!?という表情で、店内を睨みまわしております。その結果、やっぱりこの怒りはこの店にぶつけることになりました(笑)。
 彼女は割り箸の袋を手に取り、カバンから取り出した眉毛用のペンで、袋に震える字を残しました。
   (再現写真)
 そして、その書きおき箸袋を、ほぼ手付かずのざるそばの頂上にトッピング。素晴らしい眺めです。完璧。
 まるで誰かのダイイングメッセージのようにざるそばの海で揺れる文字を残し、我々は足早に店をあとにしました。
 数年後、破産係さんの呪いが効いたのか、その店は消え去り、新たなうどん屋が誕生していたそうな。


 余談ですが、「固ゆで」というのは、英語で「hard-boiled」と言います。ハードボイルド。したがって、固ゆで玉子はハードボイルドエッグ
 ハードボイルドなんて小説のジャンルだとばかり思っていましたけどね。実際は、固ゆで玉子が先にあって、それが転じて「非常な、冷酷な」の意味で使われるようになったそうです。へぇ。
 というわけで、神田川さんのミニ余談Englishレッスン終了。