オレンジ色した退場勧告

陽太郎

驚きの立候補

 会社帰り、街頭の掲示板に貼られた選挙のポスターをふと見て驚いた神田川さん。中学の時の英語教師が立候補しているではありませんか! うわっ、どうしてまた。
 と思ったのですが、よく見たら似てるけど別人でした(笑)。名前も全然違う。そりゃそうだよなぁ。当時ですでに定年退職するかしないかって歳のおじいさんだったんですから、今じゃ生きてるかも微妙ですもん。選挙に出てる場合じゃない。でも、似てるなぁ。


 その先生は「陽太郎」といって、可愛らしい風貌とコミカルな言動から生徒たちの間で人気者でした。
 ちなみに、陽太郎は我が中学に赴任する前は、ちび会長や夜の蝶さんが在席していた中学で教壇に立っており、そこでは皆から「Mr.ナカシマ」と呼ばれて愛されていたという奇特な経験を積んだ教師であります。ミスター長嶋と取り違えそうな名前ですね。
 ちなみに、どうでもいい情報ですが、陽太郎は仲間内では「陽ちゃん」と呼ばれていたそうです(本当にどうでもいい情報だな)


 さて、この陽太郎、我々に数々の伝説を残していってくれたので少し紹介。

陽太郎の呪いペン

 とあるテストの返却日。解答用紙を受け取って皆で答え合わせをするわけですが、1問だけ、正解なのに×が付けられている箇所を発見。こら、ダメじゃないですか陽太郎。神田川さんの点数をわざと低くするなんて。
 答え合わせ終了後、私は解答用紙を持って陽太郎のいる教卓まで赴きました。
「先生、ここ、合ってるのに×になってます」
「あ、すまん、すまん」
 そう言った陽太郎は、背広の胸ポケットから赤ボールペンを取り出し、私の解答用紙に勢いよく丸を描きました。しかし、その丸は赤ではなく、明らかに黒色でした。ええっ、どういう嫌がらせ?(笑)
 驚く私。そして、驚く陽太郎。って、あんた、自分で丸つけたんだろう。何を驚いてるんですか。
 あ、でも、待てよ。胸ポケットから取り出したボールペンは確かに赤色だったはず。私もそれは確認しましたし、陽太郎もそのつもりだったのでしょう。でも、実際に出てきたインクは真っ黒。どういうこと?
 って、ちょっとちょっと、このボールペン、よく見たら赤なのはキャップだけで、本体は堂々と黒インクじゃないですか(笑)。うわぁ、やられました。天然の嫌がらせです。

陽太郎の驚愕カード

 サッカーの試合で反則を犯すと、審判からイエローカードをくらってしまいますよね。陽太郎は、そのシステムを自分の授業にも導入。やかましく騒ぎ立てる生徒がいた場合、違反としてカードを繰り出します。
 しかし、そのカード、サッカーとは少し異なり、イエローカードじゃないんです。
「おい、そこ、うるさいぞ! オレンジカード!!
 ええっ! それって、JRのカードでしょ。それ、もらえるんですか?(笑) 間違ってる、間違ってる。わざとズラしてるのか、天然で間違えてるのかさっぱりわかりません。
 で、オレンジカードの次に注意されてしまうと、今度はちゃんと「レッドカード」なんです。これは正解。じゃ、やっぱりオレンジは天然なのかなぁ。
「先生! レッドカードになると、どうなるの?」
退場だ
 これも正解(笑)。それにしても退場って…。
 あ、そういえば、佐藤くんって子が一度レッドカードくらって「退場しろ」って言われてたことあったなぁ。廊下に立たされてた気がします。
 そういう時は、その前にくらったオレンジカードを使って、JRで逃亡しましょう